荒川修作とマドリン・ギンズ
美術家 荒川修作と 妻であり詩人のマドリン・ギンズの作品にはじめてふれたのは、
岡山県にある奈義町現代美術館でした。
磯崎新の設計に寄る美術館でも有名ですが、
荒川修作らの作品「遍在の場・奈義の龍安寺・建築する身体」もとても有名ですね。
まるい筒状の建物に、龍安寺の石庭が配置されていて、
天地がわからなくなるような、 とても不思議な空間です。
固定概念を壊され、五感を研ぎすますような感覚でした。
想像だけではなく、実体験として体感できることこそ、建築や美術の大きな役割でもありますね。
建築家に思想家が多いのも頷けます。
存在を表すときに、哲学的ななにかはとても重要なのだとおもいます。
それは、神社仏閣を訪れたときの、あの圧倒的ななにかを感じる力のように。
彼の思想である、「死なないための」を表現した住宅が三鷹にあります。
体験できるワークショップも定期的に開催されていたり、
1週間からのショートステイも可能という、この天命反転住宅。
いつかいってみたいと、できることならいつか住んでみたい!と、ずっと思っていた場所です。
偶然友人がショートステイしているのを知り、
以前からこの天命反転住宅への羨望のまなざしを語っていたため、
友人が気を使ってくれ、招待してくれました。
もう、前のめりで京王線に乗り込み、おじゃましてきました。
(残念ながら、娘は、パパとお留守番したいというので、置いていきました。)
ひとりでの外出もひさしぶりだし、憧れの地へいけるとなり、胸が高鳴るというのはこういうことか!
京王線の調布駅からバスに揺られ、15分ほどの場所にあります。
調布は、私が小学校3年生まで過ごした場所。
なんて縁があるの!天命さん!(もう勘違いも甚だしく)
ひさしぶりに訪れた調布駅は、京王線の地下化にともない、駅前の景色ががらっと変わっていました。
バスを降りてすぐ、飛び込むこのたてものの景色。
なんと説明していいかわからないくらいの圧倒的な存在感。
外観も凄いですが、中も凄いです。
(是非HPをじっくりみてください!)
そして、この建物の凄い所が、5戸は賃貸住宅として、実際にお住まいの方がいるということ。
しかも!デザイナーズの建物でも、内装はわりと住み易さを考慮している住宅が多いですが、
ここは、そうではありません。全室、配色は違う物の、この仕様です。
3LDKと2LDKとありますが、一部屋は球体です!
間取りという枠を軽く飛び越えた部屋です。
「死なないための家」
ここでは、普通に便利に快適に暮らすという概念はありません。
波打つ床、球体の部屋、一度に視界にはいる色の数、透明のシャワー室、
斜めになった手洗い場、天井から配線。
手を伸ばし、体をダイナミックにつかい、頭を使わないと過ごせません。
巨大な遊具のなかに住む様な感覚です。
日常が非日常でもあります。
でも、もしかすると、非日常も日常の連続なのかもしれません。
自分の感覚を呼び起こす、不思議な体験でした。
あたりまえ、常識、とかって、なんなんだろう。
自分にとっての軸を探すことは、人生の中での愉しみでもあり、苦しさでもあります。
もしかしたら、無を探求する旅なのかもしれません。
自分の存在自体、無になるような場所にいくこと、それはとてもわくわくします。
このカラフルで、奇想天外にみえる建物にいるのに、
なぜか静かな禅寺にいるような気持ちになったのはなんででしょう。(個人的な感想です)
たくさんのものに囲まれているのに、なにもないような、
なにも必要としていないような、不思議な空間。
やはり、次はショートステイしてみたいです。
この部屋で目覚め、眠る暮らし、興味津々です。
帰りのバスを待つ間、中学生のときに好きだった小沢健二の歌を口ずさみました。
「愛すべきうまれて育ってくサークル
君や僕を繋いでる ゆるやかな 止まらない法則」
三鷹天命反転住宅
http://www.rdloftsmitaka.com/